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ビジネス成功の条件は、MBA的な「ビジネススキル」を高めることだけでは不十分です。昨今では、まわりの人たちを巻き込むことのできる「ヒューマンスキル」を高めることこそが、ビジネス成功の本当の条件であると考えられています。ヒューマンスキルを高めるためのさまざまな手法について、ご紹介します。
<コーチング>
コーチングとは、コーチがクライアントに適切な質問を投げかけることで、クライアントのひらめきや気づきを促し、自ら取るべき行動を選択してもらう手法です。
外的コントロールで人を変えることはできない
心理学のウイリアム・グラッサー博士によると、人間関係がうまく行かない原因のほとんどは、双方または一方が、相手に対して外的コントロールをしようとしていることにあります。批判をする、責める、ガミガミ言う、脅す、罰する、ほうびで釣るなどして、相手を変えようとすることがこれにあたります。
外的コントロールを受けた相手は不快を感じ、逃れようとして離れていったり、逆に相手に対し外的コントロールをしようとして、ますます関係は悪化します。
たとえば、親子関係で考えてみましょう。
よくあることですが、生活習慣がだらしない子供の行動に親が批判をしたとします。親は子供を変えたい、良くしたいと思って批判をしているのですが、自分が外的コントロールを行っているとは認識していません。
一方、批判された子供は不快を感じるため親のことを疎ましく思い、行動を改めるどころか、親に対して反感を持つようになります。
親は言うことをきかない子供に腹をたて、一層、外的コントロールを行うようになり、両者の関係はますます悪化するのです。
このことからも分かるように、人間は外的コントロールによって変わることはありません。この「相手を変えることはできない」という根本的な考え方が、コーチングのベースにはあります。
対話が潜在意識を目覚めさせる
コーチングでは相手に「適切な質問」をすることによって、相手のひらめきや気づきをもたらします。
では、なぜ、質問によって気づきやひらめきが生み出されるのでしょうか。
これは、通常は表に出てこない人間の潜在意識が、対話という刺激によって働き、ひらめきを生むという考えからきています。
人間の顕在意識はほんの数%で、ほとんどの能力は潜在意識の中に眠っています。「ひらめく」というのは、膨大な情報量を持つ潜在意識から適切な解答が引き出された状態です。
コーチに求められること
コーチの最大の役割は、質問によってクライアントの潜在意識を刺激することです。どのような質問を投げかけるかによって、クライアントの気づきは変わってきます。
コーチがクライアントの話を聴く(傾聴する)際、また質問をする際などに、もっとも気をつけなくてはならないのは、クライアントのために行っているということを忘れないことです。
自分を捨てて、相手のために傾聴し質問するこの状態を、「降りる」「自分を棚上げする」などの言葉で表現することがありますが、案外難しいものです。自分が外的コントロールを行っていないかに気をつけることで、うまくいくかもしれません。
マネジメントにおけるコーチング
マネジメントにおいても、コーチング手法は注目され、多くの企業で取り入れられています。
従来の官僚型マネジメント、トップダウン方式のマネジメントは、従業員にとっては外的コントロールにほかなりません。このようなマネジメント手法は単純作業をこなすような仕事には使えても、現代社会で企業が生き残るために必要なクリエイティビティが求められる仕事には、まったく通用しないのです。
部下の能力を引き出すには、まず、上司の仕事は部下の仕事をサポートすることであると認識する必要があります。
経営トップが底辺でマネジメント層を支え、マネジメント層が現場スタッフを支え、現場スタッフがお客さまに当たるという考え方は「逆さまのピラミッド」と呼ばれています。
成熟経済においては、現場スタッフに理念の共有にもとづく権限委譲がなされた、この「逆さまのピラミッド」のような組織が作られなくては、競争に勝つことができないのです。
このような認識のもとで、マネジメントにコーチング手法を用いれば効果的なものになるでしょう。
(執筆:塚原美樹)
<ファシリテーション>
ファシリテーションとは「促進すること」という意味を持ち、広義には、さまざまな取り組みへの支援や促進を指しますが、昨今では狭義に、効果的な会議の進行の意味で用いられることが多くなっています。
会議においては進行役である議長がファシリテーター役になり、会議のプロセスを管理することで、スムーズな議事運営を促進します。研修などの場面では、講師はファシリテーターとして、上の立場から指導するのではなく、受講者の学びを促進する役割を果たします。
コンサルティングにおいても、従来のように一方的に指導するという立場ではなく、ファシリテーターとして組織がもともと持つ力を引き出すという手法が注目されています。
コンテンツとプロセス
ファシリテーションのベースにあるのは、コンテンツとプロセスを分けるという考え方です。
コンテンツとは、会議で言えば決定事項、コンサルティングや経営革新で言えば具体策にあたります。
ファシリテーションの考え方が生まれる以前はコンテンツばかりが注目され、コンテンツを導き出すまでのプロセスはおろそかにされがちでした。しかし、適切なプロセスを経ずにコンテンツだけを会議で決定したり、経営革新のために導入しても、うまくいかないということが分かってきたのです。
会議であれば、お互いに攻撃しあったり、上長ばかりが発言していたり、表面的な話し合いしかなされず本質を話しあわない会議では、参加者が心から納得のいく決定はできないでしょう。このようにして導き出した決定事項はスムーズに実施されないのです。
経営革新においても同様のことが言えます。
たとえば、5S活動を導入するとします。経営トップがやれと言えば、とりあえずはやるでしょうが、従業員は必要性を感じていませんので活動に身が入りません。5S活動が本格的に実施されるためには、従業員が自ら必要だと感じるプロセスが必要です。
この場合、経営トップはファシリテーターとして従業員の気づきを生む環境を整えることが仕事になります。
ファシリテーターに求められる能力
ファシリテーションの具体的なテクニックにはさまざまなものがありますが、基本的にはファシリテーターはサポート役に徹することです。傾聴力、適切な質問を投げかける能力、感情の知能指数と言われるEQなどの共感を得る能力などが、ファシリテーターには求められます。
(執筆:塚原美樹)
<メンタリング>
知識や経験が豊かな人がまだ未熟な人に対して、キャリア成功を目的として、キャリアと心理・社会的側面から継続して行なう一定期間の支援活動を言います。といっても、特別なモデルではなく私たちの周囲にごく日常的に存在しているモデルです。自分の人生を振り返ってみると、必ずどこかの時点で大きな影響を受けた人がいるのではないでしょうか。先輩であったり、上司であったり。
そうした人と交わした会話や共に行った活動が、その後の人生に重要な影響をもたらしています。そのときの「先輩(上司)」がメンターであり、自分がメンティーなのです。
メンタリングは、こうした関係性を、制度的なアプローチを通じて組織の中に積極的に創り出し、社員のキャリア設計や成長にプラスの影響を与えていこうとするものです。
メンタリング行動には2つの機能があります。
キャリア的機能
メンティーの昇格昇進を促進する。
心理的、社会的機能
メンティー自身の立場、役割、アイデンティティーについての理解を向上させ、一人のより成熟した人間への成長を促す。精神的、心理的健康の増進を目的とする。
コーチングとメンタリングの位置づけですが、コーチングはメンタリングの中で有効に活用される手法という位置づけになります。
コーチングでは「相手の中に解答がある」と言われますが、「若く、経験も無い人からは、どう引きだしたら良いのでしょうか?」と言う疑問が生じます。この時、必要なのが、メンタリングです。
メンタリングでは、まだ経験の少ない若い人にも、役割モデルや成功モデルを見せることで、行動へのイメージづけを行いながら、実際の行動を促します。また、問題や悩みを抱えている人にはカウンセリングを行うことで、現状改善に努めます。
事例
外資系企業A社では、新規学卒社員に入社後すぐに数年次先輩の社員がメンターとしてつき、様々な相談に乗る体制がとられます。そして、当のメンター自身も、更に数年先輩の社員をメンターに持っていて、世代間で交互にメンター・メンティーを勤める体制になっています。
メンタリング制度導入目的は、社員の転職防止にありましたが、若手リーダー人材の成長、さらには厳しい人事制度、厳しい業績主義を当然のこととして受け入れ、そういう会社だからこそ自分を賭ける価値があると考える風土の育成に成功しています。
外資系企業B社では、プロフェッショナル資格者がメンターとなり、資格認定候補者(メンティー)とペアになって、数年間をかけてプロフェッショナルとしての技量をトータルに継承しています。単にスキルに秀でた人材を育成するのではなく、テクニカル面から人格特性に至る総合的なバランスを備えた人材を養成するのが目的です。
メンターはメンティーに対して、徹底的に自己の技量を継承していくのがミッションであり、メンティーのプロフェッショナル資格への認定が実現するかどうかは、メンターの人事評価上の重要なポイントにされています。この仕組みにより、B社のプロフェッショナル資格制度は益々拡充され、人材マネジメント上の課題は克服されています。
(執筆:工藤英一)
<NLP> Neuro-Linguistic Programming「神経言語プログラミング」
NLPは、1970年代、カリフォルニア大学言語学助教授のジョン・ グリンダーと、同大学心理学科に在籍し当時学生だったリチャード・バンドラーの二人がまとめたもので、卓越した成果を上げる人の特性を解き明かす「人間の研究」です。その後、神経学・精神生理学・言語学・サイバネティクス・コミュニケーションの分野を加え、独自の発展を遂げています。
NLPの基本的プロセス
NLPの手法では以下の基本プロセスをたどります。
(1)望ましい状態を設定する(創り上げる)。
(2)現在の状態を引き出す。
(3)現在の状態を望ましい状態へ変化させるために介入する。
(4)様々な可能性を検討し、変化させるための方法の選択肢を増やし、望ましい状態へ到達できるまで、柔軟にこれらの選択肢を試し続ける。
つまり、NLPは、現在の状態から望ましい状態へ到達することを目的としており、そのために様々な方法を試行錯誤します。
まず、「望ましい状態」を想定します。次に、現状をどう認識しているのか、現状の問題点、望ましい状態への変化を妨げているもの、を正確に認識、把握します。これらが把握できたら、現状から望ましい状態まで到達させる方法や道筋を出来るだけ多く検討し、目的状態に到達するまで試行錯誤を繰り返します。
NLPの基本的考え方と活用方法
NLPのベースにある考え方は以下のようなものです。
人間は、五感=視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚と、「言語/非言語」による脳での意味づけによって、世界を認識し、体験を記憶している。つまり、神経と言語によってわれわれの行動は「プログラミング」されている。そして、プログラミングのとおりに反応し行動する。
NLPでは、このプログラミングの構造を明らかにし、それを修正(組み立てなおす)することによって、望ましい状態への到達方法や道筋を探り出します。
NLPは、人間の行動のプログラミングをより良い方向にもっていくために利用する手法ですが、自分のプログラムのみでなく、日常の様々な場面でコミュニケーションを図る相手のプログラムを修正することにも活用できます。NLPを利用して、相手の行動や思考パターンを読み取り、相手に対する働きかけを効果的に行なうことも可能となります。非常に実践的な方法です。
「モデリング」手法
NLPは「モデリング」手法(人が卓越した成果を生むための仕組みを独特の方法で解析し、それを他の人が修得できるように体系化すること)を持っているため、治療、教育、スポーツ、アートの世界など、利用される分野が広がってきています。80年代後半にはビジネスにおける個人の成果達成支援や、コーチング、組織開発の基本戦略としても利用されてきています。
(執筆:工藤英一)
<内観>
内観とは、吉本伊信(1916〜1988)によって開発された自己探求法です。現在では精神医学・心身医学・心理学・矯正教育・産業・学校教育等の分野でも研究や実践が活発に行われていて、1978年には日本内観学会が結成され、以来毎年全国大会が開催されています。また、日本文化から生み出された自己探求法として海外でも行われ、国際内観学会が3年毎に開かれています。
内観法は研修所に1週間宿泊して研修する「集中内観」と、日常生活での「日常内観」があります。
「集中内観」の方法
1 楽な姿勢で座ります。
2 母(または母親代わりの人)に対する自分を
・世話になったこと
・して返したこと
・迷惑をかけたこと
の「3つの問い」について、具体的な事実を年代順に思い出していきます。
3 思い出していくのは年代順です。
小学校低学年、高学年、中学校時代、大学生時代、23歳〜26歳(社会人になってからは3年毎)----というように年齢を区切って、現在まで思い出していきます。
4 一通り思い出したら、次に父について同様に年代順に思い出していきます。
これを2回繰り返します。
その後、配偶者、知人、子どもなど身近な人に対する自分を同様の観点から思い出していきます。
「日常内観」の方法
就寝前の30分〜1時間、電車やバスなどの移動時、人によってはお風呂に入っている時などに集中内観と同じ内容を行ないます。様々なスタイルが可能です。ポイントは毎日繰り返して行なうことです。
内観の効果
心のバランスを取り戻すことが最も大きい効果と考えられます。人の心はその人の経験やこだわりによりバランス点からずれています。また、自分のことを一番観察できていない、知らないのも自分です。内観では上記の「3つの問い」を用いて周りの人との関係を思い出すことにより、自分を客観的に見ることができるようになります。その結果、こだわり等がとれ心のバランスを取り戻すことができるようになるのです。これにより精神的に楽になります。また、自分の行動を客観的に思い返すことができるため、欠点を意識することができ欠点を克服していく下地が作れます。
経営においては、個々の対人関係が良くなるためグループ作業の効率が向上します。経営者においては重要な職員との関わりを客観的にチェックすることにより、気付かない偏見に基づいた間違った人事を避けることができるようになります。
(執筆:工藤英一)
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